豊中市の訪問診療「千里ホームケアクリニック」

(取材日:2025年6月24日)

【大阪府豊中市】訪問診療(内科・消化器内科・精神科) 
千里ホームケアクリニック 院長 片山貴之 先生 


訪問診療を利用する際の条件は、「通院が困難である」ということ。こう書くと、至ってシンプルではあるが、利用者側からしたら、どの程度の状況が「困難である」と言えるのか、判断がつなかったり、「こんなことで利用してはいけないんじゃないか」と悩んでしまうケースも多いのではないだろうか。

また、通院が困難な患者を持つご家族の中には、自分の体が動く限り、「なんとかして自分で病院まで連れていかないと」という思いを抱いている方もいるだろう。かく言う筆者も、要介護者を抱き抱えて車に乗せ、通院させていた経験がある。だからこそ、体力的にも精神的にも負担が大きい「家族による通院付き添い」で、心身ともに疲れ果てる前に、「訪問診療」を利用するという選択肢があること、「無理せずに頼っていいんだよ」ということが、もっと広く認知されることを、切に願っている。

医療カルチャー発信メディア「エムアンド」では今回、大阪府豊中市の千里ニュータウンで2025年6月に開院した「千里ホームケアクリニック」の院長、片山貴之先生を取材。これまでに消化器内科医として専門性を高め、とりわけ肝臓疾患のスペシャリストとして、高度な医療を提供してきた片山先生が、自身のクリニックの軸を「訪問診療」とした理由や、その訪問診療に取り組んでいく上で大切にしていることなどについて、詳しく話を聞いた。



消化器内科医が訪問診療クリニックを開業した理由

患者さんの生活や人生を知って、生活の質を保ち、その人らしい暮らしを送れるようにお手伝いする


ーーまず、片山先生が医師を目指されたきっかけからお聞かせください。


片山先生:私の叔父が医師で、開業医として地域医療に尽力し患者さんから頼られている姿を身近に見ていたので、幼い頃から患者さんの健康を守って笑顔にするような医師という職業に憧れを持っていたことがきっかけです。

ーー勤務医時代の印象に残っているエピソードはありますか。

片山先生:臨床経験は数多く積んできましたが、その中でも特に印象的だったのは、あるご夫婦の診療を担当させてもらった時の話です。がんを患っておられたご主人はお仕事が本当に多忙な方で、家庭を顧みないところがあったようですが、あるとき奥様が脳出血を発症されました。お互いが病気になったことで、一緒に過ごす時間が増え、家族と向き合う機会が多くなり、今までの時間を埋めることができたそうです。病気になったことは良くないことかもしれませんが、ご夫婦の裏側にあるそういった背景を知ることができたときに、病気を治すことだけが全てではないと感じました。患者さんの生活や人生を知って、生活の質を保ち、その人らしい暮らしを送れるようにお手伝いすることも医師としてすごく大切な仕事なのだと実感しました。

ーー診療科目が数多くある中で、消化器内科に進まれたのは、どういったご理由からですか。


片山先生:消化器は食べること・栄養と深く関わっていて、人の生活の質に直結する分野だと感じたからです。また対象とする臓器が多いため治療内容も幅広く、より多くの患者さんをサポートできるのではないかと思ったのが消化器内科を選んだ理由です。

ーー消化器内科クリニックとしてではなく、訪問診療クリニックとしてご開業されたのはどうしてだったのですか。

片山先生:消化器内科医として専門性を高めながら、より高度な治療を追求して多くの患者さんの治療にあたってきましたが、やはり高齢の患者さんはどんどん増えていて、消化器疾患だけではなく色んな病気を抱えている方が多くなってきていることを感じます。そういった患者さんの対応をしていく中で、主治医として一人一人の患者さんの体全体を診ていきたいという思いが次第に強くなっていったのです。先ほどお話ししたご夫婦のエピソードにも通じますが、患者さんの人生や生活の背景を知り、消化器だけではなく心臓や肺といった他の臓器や、皮膚疾患や認知機能の低下といった困りごと等も含めて、主治医として時には専門家と連携しながら、患者さんやご家族が安心して過ごせるよう責任を持って最期の時まで対応していく医師が必要ではないかと感じ、訪問診療というスタイルで開業しました。

豊中市の訪問診療クリニックとして、大切にしていきたいこと

ご家族の負担があるということを常に忘れないようにする


ーー新千里南町は、ニュータウン計画として整備されてから半世紀以上が経過していますが、このエリアでどういう存在のクリニックにしていきたいですか。


片山先生:実は私自身もクリニックの近くに住んでおり、このエリアにとても愛着を持っています。地域の病院や施設・デイサービス、訪問看護ステーション、地域包括支援センター、薬局等と顔の見える関係性を築いて、密に連携しながらより良い医療を患者さんに提供できるように努めていきたいと思っています。高齢者の方も多い地域になりますので、困った時にすぐに駆けつけて地域の皆様に頼られるようなクリニックを目指しています。

ーー患者さんの病状としては、どういったステータスの方が利用対象となりますか。

片山先生:基本的には、「通院することが困難な方」です。例えば、もともとご自宅から通院されていたけれど長期入院をきっかけに体力が落ち、通院が難しくなられたという方や、ご家族が病院に連れていくのが難しい方、がんの終末期で、最期をご自宅で過ごしたいという方などが対象です。がんの場合は、緩和ケア医療から看取りまで対応しています。

ーー終末期では、患者さんのご家族も精神的不安が大きいと思いますが、片山先生が患者家族と接する上で、意識されていることはありますか。

片山先生:それはご家族の負担があるということを常に忘れないようにすることです。在宅医療では、医師や訪問看護師、ケアマネージャーなど、いろいろなスタッフが関わりますが、そこにはご家族がいて、一番近くで普段の生活をみていらっしゃるので、ついつい無理をしがちだと思います。できるだけ不安なく過ごしていただけるように、言葉をかけたりお話を聞いたりして対話を大事にしています。

訪問診療が適応される条件は「通院が困難」であること

ご自宅でも血液検査や超音波検査、心電図検査等ある程度の検査はできます


ーー片山先生に訪問診療に来ていただきたい場合は、まずはケアマネージャーさんなどに相談をするという流れでしょうか。


片山先生:それでも構いませんし、直接クリニックにお電話をいただいても大丈夫です。こういう状況で困っていて通院が難しいというのをご連絡いただけると、基本的にはまずお伺いをさせていただきます。直接ご連絡をしにくい場合は、ケアマネジャーさんや訪問看護師さん、かかられている病院の地域連携室などを経由してご相談いただいても構いません。

ーーご家族が訪問診療を相談する際の、ベストなタイミングというのはあるのでしょうか。ご家族で限界まで対応して、心身ともにボロボロになってしまうケースもあるかと思います。

片山先生:ベストなタイミングがあるかと言われると、それは難しいですが、ご家族の負担が重なり「ちょっとしんどいな」と思われたら、いつでも相談していただきたいです。重病じゃないといけない、重篤な状態じゃないといけない、終末期じゃないといけないというわけではありません。通院が困難と感じたらいつでもご連絡いただけたらと思います。

ーー通院が困難であったとしても、患者を抱きかかえて車に乗せて病院へ連れて行ったり、介護タクシーを使ってでも、なんとか自分たちで病院に連れて行かないといけないと思っていらっしゃる方も、実際多いと思うんです。


片山先生:もちろん大病院でないとできない検査もありますが、ご自宅でも血液検査や超音波検査、心電図検査等ある程度の検査はできます。普段は訪問診療を受けておいて、大きな検査を受ける時だけ病院を受診するという選択肢もあると思います。訪問診療は通常の外来診療より少し診療費は上がりますが、それでも往復のタクシー代や通院に要する時間、手間等を考えると、訪問診療を選択するメリットはあると思います。また、急な体調変化があった時にご自宅で診療を受けることができるのも訪問診療の強みです。

訪問診療にやりがいを感じる瞬間

患者さんの人生や生活に触れながら、それに合わせて適切な医療を提供していく


ーー外来診療にも、完全予約制で対応されていますね。


片山先生:はい。風邪や発熱、アレルギー性鼻炎や喘息・COPD、高血圧症や脂質異常症、糖尿病、慢性心不全などの内科的疾患、胃腸炎や逆流性食道炎などの消化器疾患を含めて全身に及ぶ各種疾患や病態に対応しています。認知症に伴う物忘れや様々な症状でお困りの方もまずはご相談ください。訪問診療が軸となっていますので、現状は水曜日の午前中のみではありますが、予定が合わない場合も一度ご相談いただければと思います。

ーー片山先生が訪問診療に取り組んでいく上での、難しさというのはありますか。

片山先生:我々は訪問診療を行っていますが、医療を受けるスタイルは様々なので、こだわり過ぎないことも重要だと思っています。出来るだけ自宅で過ごしたいという希望で在宅医療を始めたとしても、病状や状況によって厳しくなることもあるかと思います。その見極めが難しい点かもしれません。もちろん患者さんやご家族が自宅で過ごすことを希望されれば、どこまでも付き合って安心して過ごせるよう手を尽くしますが、しんどくなってきた時には、状態によって病院や施設等の選択肢もありますし、患者さんやご家族の思いを第一に柔軟に対応できればと思っています。そういったことを気軽に何でも話していただけるような関係性を築いていくことが目標ですね。

ーー訪問診療を通じて、片山先生がやりがいを感じるのは、どういった瞬間ですか。


片山先生:いろんな方がいらっしゃって、それぞれの生活があって、訪問診療を通じてそういった部分に触れながら、患者さんが病気を抱えていても笑顔が増えていたり、自宅で生き生きと過ごしていたりすることを感じられたときは、やはり私としてはうれしいですし、やりがいにつながっています。患者さんの普段の生活、例えばどんなベッドに寝ていて、どういうトイレになっていて、そこに辿り着くまでにどういう手すりがどんなふうに取り付けてあるのか、どこで食事をされているのか・・そういう、患者さんの人生や生活に触れながら、それに合わせて適切な医療を提供していくことが、私がこのクリニックでやっていきたいことです。

ーーそれでは最後に、エムアンドをご覧の読者に、メッセージをお願いします。

片山先生:「こんなことで相談してもいいのかな?」という内容でも、悩まずに、本当に気軽に相談していただきたいですね。患者さんご本人というよりは、介護など身の回りのお世話をされているご家族が、相談先を探されるケースが多いと思いますが、頑張りすぎて精神的にも体力的にもボロボロになってしまっては、元も子もないですから、そうなる前に気軽に、訪問診療を選択肢の1つとして利用してもらいたいです。

千里ホームケアクリニック

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プロフィール

片山 貴之(かたやまたかゆき)

経歴

京都府立医科大学医学部 卒業
京都府立医科大学附属病院 研修医
社会保険京都病院 研修医
京都府立医科大学附属病院 消化器内科 専攻医
市立福知山市民病院 内科
市立福知山市民病院 消化器内科
JCHO神戸中央病院 消化器内科
大阪府済生会吹田病院 消化器内科医長
千里古江台クリニック 内科
千里ホームケアクリニック 開院

所属・資格等

日本内科学会 認定内科医
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医・指導医
緩和ケア研修会 修了

私のハマりもの

今ハマっているというか、これからハマるかもしれないものですが、バーベキューやキャンプに興味があります。とりあえず道具を揃えるところから始めて、店員さんにいろいろと話を聞きながらバーベキューのセットを買いました。そしてまずは手始めに、自宅の庭で子供たちとバーベキューをしています。子供の頃、ボーイスカウトに所属していて、キャンプや飯盒炊爨(飯盒炊飯)をして、外で調理をしてみんなでご飯を食べるというのをよくやっていましたので、アウトドアはもともと好きなんです。テントも購入したのですが、そこで寝泊まりするというよりはピクニック感覚で、近所の公園でテントを張って、その中に家族みんなで入ってお昼ご飯を食べたりしています。子供たちがまだ小さいので今すぐは難しいかもしれませんが、ゆくゆくはキャンプに出掛けてテントで一晩過ごすというのも、やってみたいですね。

クリニック情報



名称千里ホームケアクリニック
診療科目在宅医療(内科・消化器内科・精神科
所在地〒560-0084 大阪府豊中市新千里南町2-2-5 メゾンカースク1階
電話番号06-6835-8820
お電話対応時間 月曜~金曜
9:00~12:00、13:00~17:00
外来診療水曜
9:00~12:00(完全予約制)
休診日土曜、日曜、祝日
※緊急時には365日・24時間体制で対応
URL・オフィシャルサイト
https://www.senri-homeclinic.com/

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