CVLアトラ新町クリニック 院長:保田知生 先生

(取材日:2025年4月22日)


【大阪府枚方市】
内科・血管内科外科・循環器科・消化器科
整形外科・皮膚科・リハビリテーション科
CVLアトラ新町クリニック


京阪本線「枚方市駅」から徒歩5分程度の場所に、2025年4月に開業した、CVLアトラ新町クリニック。標榜科目は、内科、血管内科外科、循環器科、消化器科、整形外科、皮膚科、リハビリテーション科と幅広い。近畿大学医学部附属病院や、がん研有明病院、JCHO星ヶ丘医療センター等で、30年以上臨床に携わり続けた、院長の保田知生(やすだちかお)先生は、それぞれの診療科で蓄積した知見と実績に基づき、患者とその病気を全体俯瞰しながら、総合診療医的な役割を担ってきた。

医療カルチャー発信メディア「エムアンド」では、専門科と専門科の狭間で病気の原因が特定されずに苦しむ患者を受け入れ、複雑に絡み合う病気の1つ1つを紐解きながら、正確な診断と、最適な治療へと導いていく、院長の保田先生を取材。大学病院や総合病院での長年の研鑽を経たのちに、今回のクリニック開業に至った背景や、様々な診療科との連携を深めるきっかけになったという「血栓症」について、そしてさらに診療の幅が広がるという今後の展開について、話を聞いた。

1つの病気だけを診ていたのでは診断できない病気がいっぱいあるんです


ーー保田先生が医師になろうと思われたきっかけをお聞かせください。



保田先生:父親がもともと医師で、内科・外科のクリニックを開業していましたが、だから自分も医師になろうというのは、最初は全然なかったんですね。ただ、高校1年生のときに母親が亡くなったのですが、その頃からですかね、がんばって医師になろうと思い始めたのは。

ーーそれ以前は、将来どういう職業に就きたいと思われていたのですか。

保田先生:学者になりたいというのはありましたね。研究したり観察したりとかね。理系の何かを選んでたかなぁと思います。化学がすごく好きで、高校や大学ではかなり勉強しました。でもね、今も化学や物理のことは勉強しないといけないこともあったりして。例えば、静脈疾患の治療に使用する弾性ストッキングってあるでしょ? あれがどんな高分子の繊維でできているか、弾力性はどうかとか、化学組成を考えたりね、どんなふうに製造されているかとか、かなり勉強をして。弾性ストッキングの編み機を作っているメーカーの顧問をしていた時期もあります(笑)。

ーークリニックを開業しようと思われたのは、どうしてですか。



保田先生:父のクリニックの継承開業を考えた時期もありますし、今から9年ぐらい前にも実は開業しようと考えたこともあったのですが、そのときは開業せずで、だから今回が三度目の正直なんです。これまでいろいろな診療科で、様々な病気の治療にトライしてきましたが、その中で、自分にしかできない診療というのもあって。1つの病気だけを見ていたのでは診断できない病気がいっぱいあるんです。現代の専門分化した医療というのは、それぞれの専門のことはわかるけど、自分の領域外のところはわからない、診療科の狭間の病気が分からないという現実もあって、でもその、専門と専門の間に挟まって苦しんでいる患者さんというのが実際にいて、そういった方が行き先に困るケースがある。そんな隙間の部分も含めて全体をオーバービューしながら、保険も自由診療も含めて最適な治療を提供していくために、このクリニックを開業しました。

ーー先生のご経歴や資格・所属学会を拝見しましたが、バリエーションが多岐にわたりますね。

保田先生:その理由として、いろんな診療科を診る橋渡しをしてくれた、「血栓症」という病気との出会いがありました。その当時、私は外科医だったのですが、静脈性血栓症や肺塞栓など、体の様々な部位で発症するこの病気を、外科系医師1人で対応するというのは難しいのです。この血栓症という病気を専門にするようになって、循環器内科や産科、婦人科、整形外科など、多くの診療科の医師や医療従事者と連携を深め、術後管理までお手伝いするということを長年してきた結果、自身の診療範囲も広がりました。その他、僻地医療に2年間係わったのは、さらに経験を豊富にしてくれました。そこでは、皮膚科の診療から治療、整形外科や産科、婦人科の手術の麻酔を含めた支援を担当しました。

ーー大学病院や総合病院で、保田先生のようなマルチな動き方をされる方は、いらっしゃるものなのですか。

保田先生:ほとんどいないのではないでしょうか。私自身が似かよった経験の医師に出会ったことがありません。というのも、今の医療の体制だと、専門医の資格を維持するのも大変なことですし、それぞれの専門科で忙しすぎて、他のことまで手が回らないというのが現状です。ですから例えば、糖尿病で入院している患者さんに血栓症が発症すると、担当の内科の先生は専門ではないから、そのお手伝いをしたりとかね。循環器内科の場合、血栓が肺にできれば、肺は専門外になってくるし、心臓外科の患者の足に血栓症が起こるとそれも専門外だったりしますから。そこで私は、血管外科も経験していますし、末梢血管も診れますから、いろんな診療科で発生する血栓症を診る、そして同時に様々な診療科における通常診療と管理を学ぶということになりました。

体の不調はあるけど「原因がわからない」という場合に、まずは診察させていただきたいですね


ーー先生が専門とされている血管の病気で多いものはなんですか。



保田先生:数がおおいのは下肢静脈瘤でしょうか。下肢静脈瘤は、私が研修医の頃から関わっている病気で、治療担当歴としては一番長いのです。

ーー下肢静脈瘤では、血管のボコボコが気になったら受診するという感じでしょうか。

保田先生:足にむくみが出てきたり、その原因がわからないという段階で受診していただいた方がいいと思います。特に女性では、出産を経験されている方は足がむくみやすかったりしますが、お腹に赤ちゃんがいる段階から弾性ストッキングを着用することで、下肢静脈瘤になりにくかったりもします。また、むくみの原因が、診察の結果、心不全である場合もありますし、気管支喘息や肺気腫などの呼吸器疾患である場合もありますので、できるだけ早い段階で、正確な診断をする必要があると考えます。

ーー血管の病気では、他にどういったものが挙げられますか。

保田先生:動脈硬化などで、血管が詰まってしまう病気が多いですね。脂質異常症や高血圧症の患者さんの中には、手足の動脈が詰まる方もいらっしゃいます。そういった血管の病気に関しても、当クリニックでは診療にあたっています。血栓症を診断していなかったらわからないような、動脈が詰まる病気など、世の中には難しい病気がいろいろとありますから、患者さんに合わせて、どう治療していけばいいかを考えていかないといけないですよね。

ーー他には、皮膚科、消化器疾患、整形外科の領域も、先生の診療範囲となっていますが、幅広くカバーされているだけに、何か体の不調等で困ったら、まずは先生のところにご相談という感じでも大丈夫なのでしょうか。



保田先生:そうですね、皮膚科診療では粉瘤や脂肪腫の切除、巻き爪の治療(矯正を含む)も行いますし、循環器や消化器の疾患、整形外科診療にも対応します。でも一番は、体の不調はあるけど「原因がわからない」という場合に、まずは診察させていただきたいですね。2つや3つの病気がかけ合わさって症状が出るという場合もありますから、1つ1つの病気のことを正しく理解して、付き合っていくことが大事ですよね。

ーーリンパ浮腫の治療やケアにも注力されているそうですね。

保田先生:はい、がん治療をされている方はもちろんですが、原発性リンパ腫といって先天的な形成異常に対しても診療を行います。治療やケアは自費領域の部分も大きいですが、リンパ浮腫という病気は一度発症するとずっと付き合っていかないといけない病気です。しかしそれを専門に診ているところは少ないですから、だからこそなんとかしてあげないといけないし、重症化しないようにケアしていかないといけない。リンパ浮腫の患者さんは蜂窩織炎になりやすかったりしますから、そういう問題を1つずつ解決していかないといけないんです。

専門科と専門科の狭間を診るクリニック


ーー今後は再生医療も取り入れていかれるとのことで、診療の幅がさらに広がっていきそうですね。



保田先生:まずは、多血小板血漿(PRP)や脂肪幹細胞移植などを使えるように準備を進めています。私がもともと在籍していた星ヶ丘医療センターは、脳卒中の治療に力を入れている病院でしたので、脳卒中の患者さんに対する再生医療と、それから整形外科領域、あとは皮膚科領域ですが、美容目的というよりは治療として、再生医療を取り入れていきたいと考えています。

ーーそれでは最後に、エムアンドをご覧の読者にメッセージをお願いします。

保田先生:私はこれまで、本当に多くの診療科で様々な病気と向き合ってきました。整形外科や内臓疾患ほぼ全ての画像診断における読影もしますし、多岐にわたる経験があります。「専門科と専門科の狭間も併せて診る」というクリニックは珍しいと思うので、専門の診療科に通っていらっしゃる方でも、治療がうまくいっていないと感じることがある場合は、一度相談にきていただきたいですね。

プロフィール

保田知生(やすだちかお)

経歴

1988年 近畿大学医学部卒業
1990年 近畿大学医学部第2外科助手、外科全般(末梢血管疾患を含む)の臨床
1995年 大阪府済生会中津病院 外科医員
1997年 国保直営串本病院外科部長
1997年 医学博士号取得(胃癌化学療法の基礎研究)
1999年 近畿大学医学部第2外科講師。一般外科全体の診療に従事し、主に消化管、肝胆膵部門、末梢血管外科の臨床に従事するも、乳腺外科、内分泌外科、小児外科などの診療にも参画・支援しました。
2002年 外科統合後、肝胆膵部門と末梢血管外科の臨床に従事
2009年4月 近畿大学医学部附属病院安全管理部 講師、医療安全対策室 副室長・外科講師(肝胆膵部門と末梢血管外科)兼務
2016年7月 (公益)がん研有明病院 医療安全管理部 副部長・消化器外科兼務、近畿大学医学部外科学教室非常勤講師
2018年4月 (公益)がん研有明病院 医療安全管理部 部長・消化器外科兼務、近畿大学医学部外科学教室非常勤講師
2020年4月 JCHO 星ヶ丘医療センター 血管外科 部長(大阪大学医学部心臓血管外科入局)、近畿大学医学部外科学教室非常勤講師
2020年5月 JCHO 星ヶ丘医療センター 血管外科 部長・医療安全管理室 室長、近畿大学医学部外科学教室非常勤講師
2020年6月 JCHO 星ヶ丘医療センター 血管外科 部長・医療安全管理室 室長、大阪大学大学院医学系研究科 重症下肢虚血治療学共同研究講座 招聘准教授 (講座閉鎖に伴い2023年3月31日退任)、近畿大学医学部外科学教室非常勤講師
2020年8月 JCHO 星ヶ丘医療センター 血管外科 部長・医療安全管理室 室長・超音波センター センター長、近畿大学医学部外科学教室非常勤講師
2022年4月 JCHO 星ヶ丘医療センター 循環器科循環器外科 部長・医療安全管理室 室長・超音波センター センター長、近畿大学医学部外科学非常勤講師。現在に至る

資格

日本脈管学会 脈管専門医
日本外科学会 外科専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本血栓止血学会 血栓止血認定医
日本消化器外科学会 消化器外科認定医
弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター
リンパ浮腫研修運営委員会委員
リンパ浮腫研修終了
医療安全管理者養成研修会終了
リンパ浮腫療法士
血管内下肢静脈瘤焼灼術実施医&指導医
ベストプラクティス 医療関連機器圧迫創傷MDRPUの予防と管理外部委員
日本循環議病学会 肺塞栓症・深部静脈血栓症 予防・治療ガイドライン2017年版 協力委員
エピフィックス適正使用講習会終了
下肢創傷処置・管理のための講習会終了
臨床研修指導医講習会終了
厚労省科研班会議 がんのリハビリテーション リンパ浮腫部門班員


所属学会

日本再生医療学会(正会員)
日本循環器学会
日本消化器病学会
日本脈管学会(評議員)
日本血栓止血学会(代議員)
日本リンパ学会
日本リンパ浮腫学会(理事)
日本リンパ浮腫治療学会(評議員)
日本外科学会
日本臨床外科学会
日本心臓血管外科学会
日本血管外科学会
日本静脈学会(理事)
日本関節病学会
日本癌学会
日本消化器外科学会


私のハマりもの

猫を2匹飼っています。足の長いマンチカンの「うみ」ちゃんと、キジ猫の「てん」ちゃんです。飼い始めて3年ぐらい経ちますが、猫って、おもしろいもんやなぁって思います(笑)。猫ってね、お腹が空くと擦り寄ってくるんですよね。それがかわいくてね。小さい頃はね、そこら中引っ掻きまわすし、穴があったら入るし、やんちゃだったのですが、最近は大きくなってあまり悪さをしなくなってきました。とはいえ、段ボールに入ったりカバンの中に入ったりね、おもしろいもんですよね。もちろんキャットタワーも作っています。猫のマイペースなところが好きですね。猫を見ていると「自分もマイペースに生きたいなぁ」って思います(笑)。

クリニック情報


名称 CVLアトラ新町クリニック
診療科目 内科・血管内科外科(下肢静脈瘤・リンパ浮腫・血栓症、慢性動脈閉塞症など)・循環器科・消化器科・整形外科・皮膚科・リハビリテーション科
所在地〒573-1191 大阪府枚方市新町1丁目10-5N・Iビル3階
電話番号 072-807-7771
診療時間 ●診察
9:00~12:00(月火水金土に原則予約のみ)
17:00~19:00(月・火・金)

●処置・手術
13:00~16:00(月・金)
※予約のみ

●自費診療
13:00~16:00(火・土)
9:00~12:00、13:00~15:00(日祝)
※予約のみ

●リンパケア
10:00~15:00(木)
※予約のみ
URL・オフィシャルサイト
https://at-shinmachi-cl.jp/

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